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　政府は23日、2023年度当初予算案を閣議決定した。一般会計の歳出総額は114兆3812億円となり、22年度当初予算（107兆5964億円）から6兆7848億円増え、11年連続で過去最大を更新した。岸田政権は23年度からの5年間で防衛力を抜本的に強化する方針で、その初年度から防衛費を大幅に増額した。総額が100兆円を超えるのは5年連続。初めて110兆円の大台を超える予算案となった。

　岸田文雄首相は23日の政府与党政策懇談会で「日本が直面する歴史的な難局を乗り越え、我が国の未来を切り開くための予算だ。裏付けとなる財源と合わせ、防衛力の抜本的な強化を進めていく」と述べた。

　防衛費（米軍再編経費を含む）は前年度当初予算比26・4％増の約6兆7880億円。政府は23～27年度の5年間で43兆円を確保する方針で、前年度（約5・4兆円）から約1・4兆円増額した。反撃能力（敵基地攻撃能力）の手段にもなる米国製巡航ミサイル「トマホーク」（射程1600キロ以上）の導入に2113億円を計上するなど、装備品を充実させる。

　このほか、外国為替資金特別会計からの繰り入れや、新型コロナウイルス対策予算で積み上がった積立金の国庫返納、国有財産の売却などで税外収入として4・6兆円を確保。このうち1・2兆円を23年度の防衛費に充て、残る3・4兆円は新たに作る「防衛力強化資金」に繰り入れ、24年度以降の防衛力強化財源とする。

　増額を賄うために建設国債の発行にも踏み切る。23年度は4343億円を防衛費に充てる。道路や橋などに限って発行してきた建設国債を防衛費に充てるのは戦後初めて。

　国の政策に充てる一般歳出は、同8％増の72兆7317億円。主要経費別にみると、防衛費は今回の増額によって公共事業関係費、文教・科学振興費を上回り、社会保障費に次ぐ規模の大きさとなった。

　一般歳出最大の予算となる社会保障費は同1・7％増の36兆8889億円。高齢化の進展に伴う自然増によって過去最大を更新した。「こども家庭庁」が来年4月に創設されることに合わせ、子ども・子育て支援も強化。出産育児一時金を42万円から50万円に引き上げるほか、出産家庭に計10万円相当を支給する交付金も継続する。

　50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向け、新たに「GX（グリーントランスフォーメーション）経済移行債」を発行。23年度は22年度補正予算分と合わせて計1・6兆円の債券を発行し、脱炭素政策の財源に充てる。地方交付税交付金は同3・3％増の16・4兆円。地方のデジタル化を促進させるために「デジタル田園都市国家構想交付金」を補正予算分と合わせて計1800億円確保した。

　新型コロナ禍や物価高、ウクライナ危機による景気減速への対応に使える臨時の予備費は22年度当初予算と同じく計5兆円を計上した。過去に発行した国債の返済や利払いに充てる国債費は同3・7％増の25兆2503億円となった。

　歳入では、コロナ禍からの経済活動の再開や円安の進行による企業収益の改善を背景に法人税や消費税が伸びたことで税収を過去最大の69兆4400億円と見込んだ。税収だけでは歳出全体を賄えず、新規国債を35兆6230億円発行する。【松倉佑輔、町野幸】